――なぜ人吉市に移住しようと思ったんですか？

　一番の理由は「気が合う人が多かったから」です。私は人吉に来る前は鎌倉に半年ほど、その前は数年間東京に住んでいました。そしてコロナを機にワーケーションで人吉に来る機会があり、そこで人吉の人たちとは気が合うなと感じました。そのあとも何回か仕事で人吉に来て、やっぱりいいと思ったので移住してきました。

――移住先の選択で重視した点について教えてください。

　まずは先ほど話したように、「地域の人が私と気が合うか」です。私はこれを一番重視していましたが、ほかにも「ネット環境」が問題なくあるかというのも重視したポイントです。

　私はIT系の自営業をしているので、都会から離れていても仕事はできます。しかし、地方で働く意味を考えると家以外でネット環境が整っていなければ意味がありません。その点、人吉には「くまりば（人吉市まち・ひと・しごと総合交流館）」があります。普段は家で一人で作業しますが、ここにきて球磨川を見ながら仕事をしたり、ほかの利用者と話をしたりできるくまりばがあるというのは大きいと思います。

――移住する際に困ったことはありましたか？

　そうですね。私は自営業でアプリ開発の仕事をしているのですが、家を借りようとしたときに不動産屋さんから断られてしまうことが何度もありました。厳密には大家さんから断られていたのですが、やはり自営業ではわかりやすいもの、例えば資産などがないと滞納するのではないかと思われてしまい難しかったです。今の家も、借りる際には事業計画書や昨年度の報告書などを作って大家さんに説明し、理解してもらえました。

　しかし今の一軒家は、前に住んでいた鎌倉で借りていたマンションの部屋と比べると広くなったのに家賃は下がっているので十分満足しています。

――人吉の生活で困っていることはありますか？

　特にない、ですね。私は車も自転車も持っていないのですが、日用品は徒歩やバス、タクシーをつかえば揃いますし、現代ではネットで何でも買えます。実際、運ぶのが大変な家具なんかはすべてネット通販で買いました。また、服もネットで買えるので人吉に居てもオシャレはできますよ。

――最後に、これから移住を検討している方に向けてメッセージをお願いします。

　東京にいたころの私は、お金がすべてだと考えていました。だからお金を稼ぐことだけに必死になって、自分のことを考えることはありませんでした。でも人吉はお金を使う機会が少なくて、仕事のことを考える時間が減って自分のことを考える時間が増えました。そのおかげで今まで自分が考えていなかったようなことにも目が向くようになり、結果として生活は豊かになったと感じます。なので、今都会にいてお金に疲れた人や、やりたいことで迷っているような人は一回人吉に来てみるといいですよ。